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◆河童倶楽部通信 10   ANNIVERSARY 創刊10号!
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 河童倶楽部通信も、ついに二桁、記念すべき10号までこぎ着けました。
創刊当初は「長続きさせる為にももう少し手抜きの文章でもいいのでは!」
などとご心配をいただいたり、自分でもいつまで続くやらという不安もあ
りましたが、もうすっかり板に付いた感じで軌道に乗ってきました。愛読
者の皆さまのご期待と応援がある限り、どんどん書き続けようと思います。
 
 これだけの成果が揃ってくると自信らしきものも生まれてくるもので、
そろそろ講演会とか出版活動などへの夢を想い描いたりするものです。
いったい、どれくらい文章を書けば、ボリューム的に一冊の本になるか...
手近にあった本の文字数を調べると、40字×15行(原稿用紙1.5枚分)
が1頁になっていて、それが200頁もあれば1冊の本になっているようです。
その中に写真などが含まれるわけだから、正味400字詰め原稿用紙250枚分の
文書を仕上げれば、ハードカバーの付けた体裁の良い本が出来上がるのです。
河童倶楽部通信の一回分は、平均34字×70行=原稿用紙6枚となるので、
250÷6=40回、今までの4倍書けば本になるんだなぁ。 \(^o^)/


 
┏■苔むした階段           神奈川県鎌倉市 杉本寺━━┓
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 写真は、鎌倉の杉本寺の急斜面を一直線に続く階段を見上げたものです。
長い年月の間に幾多の人々がそれぞれの思いを持って通い続けた歴史が
刻まれているようです。ちょうど登る人と下る人とが左側通行ですれ違っ
たのか、あるいは二人並んで手を取り合って昇り降りしたのでしょうか、
右と左にくっきり2列の窪みができています。参考文献※1によれば、この
階段に使われている石は、逗子の鷹取山付近から切り出された「鎌倉石」
とよばれるもので、脆くて風化しやすい上に、多孔質で保水性があるので
苔がつきやすいのが特徴とのこと。もっとも現在は文化財保存のために、
この階段は通行止になっていて、お参りする人々は、隣の緩いスロープを
登っていきます。
 
 お寺とか神社の多くは、郊外の見晴らしのよい山の斜面にあるもので、
そこに辿り着く前に、このような”心臓破りの階段”をよく見かけます。
野球部の合宿ともなると、こうした階段を50往復したりする光景が目に
浮かんでくるようです。現在の建築基準法では、階段の構造が細かく規定
されていて、水平方向30pに対して垂直方向は20p以下にすることや、
高さ数m毎に、踊り場というフラットな部分を設けることになっています。
ところが昔の階段は地形にあわせて無茶苦茶な勾配で石を積み上げている
こともあり、45度以上の傾斜が延々と続いている階段もよく見かけます。
ゼイゼイと息せき切らせて登るうち、ふと後ろを振りかえろうものなら、
目がくらんで足がすくんでしまうほどでしたから、お年寄りや着物の女性、
あるいは子供には怖くて登れないほど急坂で、「男坂」と呼ばれています。
しかし大抵のところには、もう一つ「女坂」と呼ばれて、少し遠回りでも
ずっと緩やかな坂道があるものです。近年になって車で登るためにできた
いう見方もされていますが、昔の人の優しい心遣いから作られたのだと
いう方が本当のようです。医学の発達していない昔のことですから、体の
不自由な人や、お年寄りなど足腰の弱い人が大勢いて、そういった人ほど
体が丈夫になるようにお参りに出掛けたことと思います。だから地元の人
たちがお金を出し合って、誰もがお参りできるようにしてつくった女坂が
今もあちらこちらに見ることができます。
 
 このような発想が、この数年の間に再び街によみがえりつつあります。
バリアフリーと呼ばれるもので、障害者やお年寄りにも優しい街づくりを
国全体で考えるようになりました。愛知県でも「人にやさしい街づくり」
という条例が平成7年に施行され、公共施設やスーパーなどの階段の横に、
車椅子でも通れるスロープができたり、駅や横断歩道にエレベータが取り
付けられるようになりました。歩道には点字ブロックが埋め込まれたり、
横断歩道部の段差が解消されたのも、ほんの十数年前から始まったばかり
です。前回も河童倶楽部通信に書いてきましたが、ほんの半世紀前頃から
我々は自動車のための道路をなりふりかまわず作り続けてきました。それ
が交通戦争とか商店街の崩壊などの問題をたどり、反省が生まれました。
人間が人間らしく伸び伸びと歩ける道を取り戻すにはどうしたらよいかを
行政も住民も考えるようになり、新しい発想の街づくりが始まっているの
です。
     ※1:安西篤子著「鎌倉 海と山のある暮らし」草思社
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