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◆河童倶楽部通信 11   「風景」と「景観」の違いについて
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「風景」と「景観」という、二つのとてもよく似た言葉があります。
国語辞典によると、およそ次のような表現がされているようです。 
(1)風景〔landscape〕:自然・人・建物などによって形成される,その場所・場面の様子。
(2)景観〔scene〕    :そのもの独特の情緒や味わいを持った情景。ながめ。
これだけを見る限り、あまりハッキリとした違い読みとれないのですが、
私なりに次のような違いがあるように感じるのですが、いかがでしょうか。
 
 まず第一に距離的な違いを感じます。風景というと高いところに立って、
遠くを見渡すような場合に使います。そこには必ず水平線または地平線とか
山の稜線が含まれていて、近距離にある庭とか建物から無限大の距離までの
広々とした世界が対象になっているように思われます。それに対して、景観
とは、どちらかというと近距離から中距離にあるものが対象で、自分の目線
を少しずらすことで、いろんな表情が読みとれたり、そのものの材質や光の
当たり方や色使いで、見え方が大きく変わったりもします。私の定義では、
近距離とは声が届く範囲、中距離とは自分が歩いて行くことができる範囲と
とらえておりますが、景観はそうした限られた範囲を対象としているだけに
人間の手で丸ごと新しいものを生み出すことも可能です。特に都市において
は、数年前までの材木置場がきれいな公園になっていたとか、駅前のアーケ
ード街が大きなビルになっていたなど、人間の力でめまぐるしい改造が加え
られています。この河童倶楽部通信のテーマは「景観とまちづくり」
ら、特に都市景観の話は今後多数登場させてまいります。
 
 もうひとつの違いとしては、景観とは人間の五感でいうところの「視覚」
だけで感じるものであるのに対し、風景とは感覚的にもう少し広い範囲か
感じられるものではないかということです。ちょうど河童倶楽部通信 7
川越の時の鐘の音色が「日本の音風景100選」に数えられていることを紹介
たとおり、時には聴覚で感じることもあれば、風雪などは触覚で感じます。
あるいは土用の丑の日あたりに、鰻を焼くにおいを嗅覚や味覚で感じるのも
場合によっては風景の一片に含まれるのかもしれません。昨今のグルメブーム
に中に味風景っていう言葉は探せばありそうですが、臭風景っていう言葉は
この河童倶楽部通信がはじめてで、「日本の臭風景100選」を探していくと
いう企画も楽しいかと思っております。
 
 いま気付いたのですが、「臭い(におい)」と書いて「臭い(くさい)」
とも読めます。どうやら我々は(におい)という言葉を悪い意味で使うこと
のほうが多いようです。エレベーターの中で誰かが「なんかにおわない?」
って呟くと、誰もが息を止めている光景が思い浮かびます。別にオナラの
においでなくても、コロッケのにおいだったり香水のにおいだったりする
こともありますが、なぜか人間は無臭を最も快適と感じるようできている
ようです。ちなみに「臭い(くさい)」の反対語をご存じでしょうか?
「芳しい(かぐわしい)」という言葉が正解です。

 河童通信9において、幕張の歩行者専用道路の写真を掲載しました。
その件についてもう少し補足説明をするために、今回はイラストマップを
用意しました。地図中央にあるのがJR京葉線「海浜幕張駅」で、南側に
10分ほど歩くと東京湾の海岸線に再現された人工の砂浜があります。
地図の下側にある丸い施設が、千葉マリンスタジアムで、その北側にある
のが幕張メッセです。先回の写真に登場した「メッセモール」は、幕張
メッセからJRをはさんで北の方まで伸びる幅の広い歩行者専用道路で、
駐車場の上にふたをした構造になっています。
 
 幕張一帯は高層ビルが林立する割には、広々とした印象が持てたのは、
一つはビルとビルとの間の空間が十分に広く取ってあるということです。
アメリカはニューヨークの中央に、セントラルパークという広大な公園が
あるのと同様に、幕張海浜公園という緑や水辺を再現した自然が作られて
いることで、空が広く残されていて、明るく開放感がありました。
 
 もうひとつ、「人にやさしい街づくり」が徹底されていることです。
地図をよく見ると、道路のところどころに横断歩道橋が架けられていて、
それらがビルの2階の高さにある通路で連続しているのがわかりますか?
つまり駅を降りた歩行者は、一度も車道を歩くことなく目的の施設まで
歩行者専用の通路を歩いて行けるのです。ところどころに屋根があったり、
動く歩道やエスカレータ(エレベータ)もあり、案内板も充実していました。
このように、歩行者と自動車を分離させることで交通事故の心配もなく、
歩行者が楽しく歩けるようにするという設計が、最近は各地の新しい街で
見られるようになってきました。
 
┏■最新型のバス            千葉県幕張副都心  ━━┓
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 日本の最先端を行く幕張で、もう一つ珍しい物を見たので写真に収めま
した。写真のバスは、撮影方向が悪くてよく解らないかもしれませんが、
タイヤが前と後ろと真ん中に3つあり、すごく長いという印象でした。
我々がいつも目にしているバスは、車両構造令という法律で寸法が決めら
れているため、全長12m、幅2.5m、高さ3.8m以内になっているはずです。
だから、全長18mもあるこのバスは、普通のバスの1.5倍の長さがあること
になります。実は車両中央にジャバラがついていて、そこが電車みたいに
「く」の字に折れ曲がる構造になっています。この場合はトレーラー
いう車種の車両制限令に適合するので、認可されているようです。
 駅とイベント会場との間で大量輸送が必要となるという、ここならでは
の乗り物です。大きな都市ほど電車の編成が長くなるという法則があり、
田舎では1両編成の電車があれば、名古屋地区では8両編成になるのです
が、東京地区では多くの路線が15両編成で電車を走らせています。それ
と同じ発想でバスまでも2両編成にしてしまうとは...。東京はスゴイ。
 
  
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