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◆河童倶楽部通信 18  アイデンティティに関する考察  
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 私は、昭和の最後の年に愛知県職員に採用されたので、12年もの間、
公務員としての仕事に従事してきたことになります。人間の時間的感覚は、
年齢の増加とともに"時間を計る物差し"を、どんどん短いものに持ち替え
ながら、余命を消化していると感じることがあります。12年という時間は、
例えば小学校に入学した子供が、中学校、そして高校を卒業するといった
人生の最も変化に富んだ成長過程に相当する長い時間です。そうした長い
時間を社会人として過ごしてきて、自分にはどれだけ進歩があったのか、
という命題が生まれてきました。もちろんその間、「仕事」と「結婚」、
そして「マイホーム」という、人生の充実に有益な三点セットを整えたり、
趣味を楽しんだりしてきました。しかし何かアイデンティティというか
ただ自分がその時にその世界で満足するのでなく、もう少し掘り下げて、
自分の専門分野を明確にしながら、自己表現の形を作りたいというのが、
命題を解決する糸口だと考えたのでした。
 
 アイデンティティ(Identity)とは、日本語ではうまく表現されていない
新しい言葉だと思いますが、自己認識とか自分らしさの表現手法といった
意味で使われている言葉です。このアイデンティティ築くために、人間は
誰もが限られた時間の中で生きているのだから、仕事家庭に費やす時間
との両立が何よりも必要です。本来なら学生時代迄にアイデンティティ
確立し、それを実現するための仕事を探したり、配偶者を見つけることが、
人生の充実に結びついていくのですが、今となっては仕事と家庭を分析し、
その延長線上で確立可能なアイデンティティを求めるのが得策なのです。
 
 まず自分の仕事について分析すると、土木事務所の技術職員として従事
してきた中にも、いろいろな分野があって、現場(道路や河川、砂防など)
の建設工事の設計・積算・監督・検査等を担当したり、施設の維持管理を
担当したり、将来の新しい街づくりなどを計画したりするなど、様々です。
それぞれの分野とも、健全な国民生活や繁栄した社会基盤を築くやり甲斐
のある内容ですが、私にはどちらかというと街づくり(都市計画)という
ものに、いささか心を惹かれるれるものがあるようです。
 次に家庭について分析します。私は結婚して8年になりますが、細君の
体調上の理由から、子供のいない二人だけの生活をしています。このことは
子供中心に動いている同世代の家庭環境を思えば、時間的にも経済的にも
自由が利くという都合の良い面もあります。また自宅についても両親から
独立したマンションに住んでいるため、庭や建物の維持管理に時間をとら
れることもなく、仕事から帰ればほとんどマイペースの生活ができます。
 
 こうした自分が置かれている環境を生かしたり、制約とかを考えながら
アイデンティティを築いていくことになります。逞しい体を持っている人
は、マラソンとか野球やゴルフなどに求めたり、あるいは、子供の教育に
力を注いだり、皆さんそれぞれに大切な世界をお持ちのことと思います。
それを持ち合わせていない私にも、何らかの形で最も効率よく自分を表現
するものが必要であるとの発想から生まれたのが「河童倶楽部通信」なの
です。これならば「パソコン」と「旅行」という自分の趣味が、家庭環
と両立できるだけでなく、仕事との融合が実現していくことになります。
私が目指すのは、ただ旅行して写真を撮って、それを報告することでなく、
あくまでも「景観と街づくり」をテーマにして、日頃から文献等の研究や
講演会やインターネットで情報収集しつつ、興味のある街に取材に出掛け
るというスタイルをとっていきたいと考えています。
 
┏■都市景観の鑑賞と交通手段について ━━━━━━━━━━━━━┓
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 私が職場で使っているスケジュール帳には、都市景観を鑑賞する目的の
旅行には「○○視察」、温泉や行楽地などへ細君を連れて出掛ける場合は
「○○旅行」と別の表現をしています。もちろん視察といっても、自分の
費用で休日または休暇をとって出掛けるため、プライベートであるけれど
仕事に関連した活動と認識しています。視察の場合は一人で電車やバス等
の公共交通機関を利用することが多く、旅行の場合は自動車の利用が多く
なります。
 
 岡崎市のKさんからいただいたメールに、次のような質問がありました。
>「河童さんが、1泊2日で取材旅行をする場合、お泊りはどんなところに、
> どのように予約して行くのですか?」
 視察の場合は、ハッキリ言って同伴者の存在が邪魔になったりするもの
で(旅先で出会うマドンナ役などは例外)、一人で思う存分歩き回ったり
風景を観賞するなどの自由が必要です。ですから旅行の場合は「休暇村」
とか「じゃらん」という雑誌に紹介されたホテルなどの割引プランを利用
するのに対し、視察の場合は宿泊が目的ではないため、極力節約します。
目的地が近県ならば、春・夏・冬に発売される「青春18切符」で日帰り
するし、埼玉のT君宅は拠点宿泊所として、よくお世話になっております。
それ以外だと、素泊まり6千円程度のビジネスホテルや公営のユースホス
テル(3千円程度)を利用しますが、流石に野宿という経験はありません。
 
 また、毎日毎日洪水のように流れてくる仕事を片づけながらその隙間に
休暇をとる必要があるため、長い連休をとったり、数週間も前から予約を
して出掛けるという無謀なことができないし、写真撮影のためにも天候
予測しながら出発を決断するため、切符や宿の手配をするのは3日前とい
うパターンが多いです。だから連休や夏休みの最盛期を外して、ちょうど
今頃の真冬とかGW明けから梅雨時などは、空いていて予約も取りやすく、
宿泊料金も安いというチャンスでもあります。あと限られた時間を有効に
利用するために、夜寝ている間に移動して、現地で朝から行動するという
夜行もよく利用します。安城を夜中の0時04分に出て、東京に4時40分に到
着する「ムーンライトながら」という全席指定席の夜行列車は、青春18
切符が使えるため常識外れに安い移動&宿泊手段です。また九州地方なら、
名鉄バスセンターから出る夜行バスも、金曜日に仕事を終えてから出掛け
て月曜日に会社へ直行すれば、丸2日間九州を歩きまわることが可能です。
私は次の週末あたり、ハウステンボスを視察すべく計画に取り組んでいる
ところです。
 
 
 昨年8月末に、夜行バスで出発して博多へ出掛けたときのことを紹介
ます。名鉄バスセンターを夜9時に出る博多行き「どんたく号」は、バス
1台に座席が27席しかなく、それぞれが独立して横に3列しかないので、
リクライニングしても随分とゆったりできます。最初の2時間ほどはビデ
オ上映がありますが、そのあと車内は完全消灯となり、どこにも止まらず
にひたすら走る続けていく間、車内は眠るためだけの空間になります。
気がつくと「壇ノ浦サービスエリア」に止まり、ここで初めて朝の休憩を
とります。目前には上の写真の通り、本州と四国を連絡する関門橋を望み、
海峡には汽笛を鳴らしながら、たくさんの船舶が行き交う様子を見つめる
とで、電車とは違った旅の始まりの印象がありました。
 この時は、下関のユースホステルで1泊して九州で丸2日を過ごした後、
小倉から四国の松山に向かうフェリーでもう一泊しました。夜中に関門海
峡をくぐった船が松山に着いたのは朝の5時。2等寝台でも5090円の料金
で入浴もできます。ただバスと較べるとエンジンの音と振動が大きくて、
ここで熟睡するには相当の熟練が要るようです。
 最終日は、四国の今治から広島県尾道市までつながった本四架橋(下の
写真は来島海峡大橋)を歩いて渡り、青春18切符でJRの快速列車を乗
り継いで帰り着きました。慌ただしくて疲れる3泊3日間の旅でしたが、
飛行機や新幹線の半額以下の料金でありながら、現地での行動時間を存分
に生かしつつ、宿泊費も極端に切りつめた視察旅行でした。
 

 バス旅行について、東京のNさんからのメールを紹介しておきます。
 
> 東京には、なかなか安いバスツアーがたくさんあって、なんだか
> バスツアーって若者臭くない感じもしていましたが、でも、充実
> しているのに、3980円とかからあるので、かなり手ごろなんです。
> 私が行くのは、4980円のツアーで、3食ついている西伊豆の方の
> 旅です。私は、辛いものが大好きなんですが、3食のうちの1回
> にワサビをふんだんに使った料理がいただけるという話で、それ
> だけでも、十分に楽しみな私です。
 
 こうしたバスツアーは、週末の折り込みチラシでたくさん見ることが
できますが、まず値段が安いのが魅力です。あと集合場所まで行けば、
後は乗っているだけで、食事と昼寝が付いているので快適このうえない
のも魅力といえます。私も時と場所によっては、ツアーも活用したいと
思います。
 
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