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◆河童倶楽部通信 30 路面電車の走る街
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音戸大橋ができた頃から、自動車の保有台数が急激に増え続けてきた。
昭和40年に国内の自動車台数は700万台であったが、その後の30年余りで
10倍の7,000万台にまで増加したという。これは、アメリカについで世界
第二位の自動車保有国になっているというわけだ。

 昭和40年代後半に、興ったモータリゼーションという交通革命により、
日本全国の街から、次々に路面電車の姿が消えていった。道路の渋滞を引
き起こす邪魔者として、道路を車に明け渡し、大都市では地下鉄にバトン
タッチしたり、バス輸送に転換したりしてきた。

 ところが今なお、路面電車が現役で動いている街がある。「駅すぱあと」
というソフトウェアには路面電車として下記の21路線が登録されている。
中には一部区間のみ道路上を走るものも含まれているが、思っていた以上
に長い区間を走る路線が多い。また料金についても均一料金制の所が多く
長崎などは、100円均一という驚異的な安値で運営されている。
名称 所在地 距離 料金
札幌市電 北海道 8.5Km 170円均一
函館市電 北海道 10.9Km 200円〜240円
都電荒川線 東京都 12.2Km 160円均一
東急世田谷線 東京都 5.0km 130円均一
江ノ島電鉄 神奈川県 6.7Km 190円〜250円
豊橋鉄道東田本線 愛知県 5.3Km 150円均一
名鉄岐阜市内線 岐阜県 10.9Km 170円均一
富山地鉄市内線 富山県 6.4Km 200円均一
加越能鉄道万葉線 富山県 7.9Km 160円〜370円
福井鉄道福武線 福井県 3.6Km 180円均一
京阪大津線 滋賀県 14.1km 160円〜310円
京福嵐山線 京都府 11Km 180円〜230円
阪堺電車 大阪府 18.7Km 200円〜290円
岡山電軌市内線 岡山県 4.7Km 140円均一
広島電鉄市内線 広島県 18.8Km 150円均一
伊予鉄市内線 愛媛県 6.9Km 170円均一
土佐電鉄 高知県 25.3Km 180円〜500円
筑豊電鉄 福岡県 5.1Km 160円〜210円
長崎電軌 長崎県 11.5Km 100円均一
熊本市電 熊本県 12.1Km 130円〜200円
鹿児島市電 鹿児島県 13.1Km 160円均一

 今回取材してきた広島の路面電車について、いくつかの写真を紹介します。
広島には、新旧様々な表情を持つ路面電車がうじゃうじゃと走っているので、
写真の題材としてもすごく楽しめます。古いものでいうと、広電オリジナル
車両の他、京都や大阪、神戸や福岡で廃止された車両を、当時の塗色のまま
で走っています。600円の一日乗車券で数々の車両にも乗車してみましたが、
車両によって揺れ具合が違うし、古いものは床や壁が木でできているので、
何とも言えないレトロな匂いがしました。
 また新しい車両も、積極的に導入されていました。従来の車両だと1両編
成で、路線バス2台分ぐらいの定員かと思いますが、広島では2両とか3両
編成のタイプがたくさん走っていました。そうした中で最たるものは、昨年
ドイツから輸入したGREEN MOVERといわれる5両編成の新型車両です。長さ
30.52m、幅2.54mという日本最長の路面電車で、運転席や客席のデザインが
国産の車両にない雰囲気でした。窓が広くて明るくて、何よりも床が低いと
いうこと。旧型の車両だと乗り込むときに急な階段を、「よっこらしょ」と
気合いを入れて2,3段登らなくてはならないのに、GREEN MOVERだと軌道面か
ら30pの高さに床があり、車椅子でもラクに乗り降りできるという、人にや
さしい設計となっていました。

 このGREEN MOVER投入には、運輸省の"近代化補助金"という制度が支えてい
るということです。一編成の値段が3億4千万円ぐらいかかるということで、
その内の1億円を、国が1/2、県が1/4、沿線の市町村が1/4を補助していると
いうことです。自動車中心の交通体系において路面電車の良さが見直されて
いる昨今。今後も行政側と利用者とが互いに支え合っていけば、路面電車は
もっともっと便利で快適な乗り物として定着していく可能性を持っていると
思います。


広島駅前(800形/s61広島・3000形/西鉄福岡)


広島電鉄(神戸1100形)

広島電鉄(大阪900形)

広島電鉄(ドイツ製のGREEN MOVER、低床型)

広島電鉄(ドイツ製のGREEN MOVERの運転席)

広島電鉄(ドイツ製のGREEN MOVERの車内)

広島電鉄green Linner(3950型/広島1997)

広島電鉄(京都1900形)
 
 広島以外でも、過去に取材した写真があり、昨日は大津市の写真も撮って
来ましたので、いくつかを紹介します。今後も新しい写真が入手できれば、
このページに追加していく予定です。

 いろいろな都市の車両を見て気づかれるかと思いますが、列車の幅が何と
なく違って見えたりしませんか? 実は列車ではなくレール幅が違うのです。
路面電車の場合、在来線の列車と違って、交差点など急なカーブが多いため、
レール幅は広めにできているようです。広島や長崎、鹿児島や熊本、京阪・
阪堺・京福は、新幹線と同じ1435oの標準軌を使用しているためどっしりと
した安定感があります。あと函館・東京・東急が1372oで、その他の都市は在
来線と同じ1067oの狭軌を使用しているとのことです。
 市内区間だと自動車と同程度の制動停止距離とするため、せいぜい20q/h
程度の低速で走行していますが、将来は在来線と相互乗り入れの計画がある
ようです。その時に壁となるのが、このレール幅と電圧だといわれています。
路面電車が今後も都市の交通機関として定着していくためには、いかにして
ユーザーに便利であることをアピールできるかが課題だと思います。今のと
ころは交通渋滞の激しい都市では、自動車やバスよりも定時運行と大量輸送
の面でリードしているのに過ぎないかもしれません。しかし、今後はもっと
いろんな面での改善を積み重ねていけば、相当な可能性を持つ乗り物になる
と思います。

長崎市電

名鉄岐阜市内線(丸窓付)

阪堺電鉄

名鉄岐阜市内線

京阪電車(浜大津駅前) 左は京都地下鉄4両、右は坂本行きと石山行きのすれ違い。

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